FIB-4 indexの健診結果項目追加について
FIB-4 indexの健診結果項目追加について
(健康診断で脂肪肝と言われたら)
2020年に日本消化器病学会と日本肝臓学会が合同で飲酒に関係のない脂肪肝に関するガイドライン(NAFLD/NASH診療ガイドライン2020)を発表しました。今回、これを参考に脂肪肝について解説し、来年から健康管理センターで導入するFIB-4 indexについて説明します。
<脂肪肝は怖い?>
以前、肝機能異常の人に飲酒歴などがない場合、「脂肪肝だからあまり心配はいりません」と話していた時代がありました。脂肪肝は、血液検査に加え、腹部超音波やCTスキャン検査などで診断しますが、アルコールと関係ない脂肪肝は、進行しないものと考えられていました。しかし、近年、飲酒と関係がない脂肪肝の中に病気が悪化し、肝硬変そして肝がんを発症するものがあることが分かりました。
<肝硬変・肝がんに進展する脂肪肝とは?>
脂肪肝は、肝臓に中性脂肪がたまった状態のことを言います。脂肪肝の中では飲酒によるアルコール性脂肪肝がよく知られていますが、アルコールとは関係のない非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD・ナッフルド)の存在が注目されています。NAFLDは、非アルコール性脂肪肝(NAFL・ナッフル)と非アルコール性脂肪肝炎 (NASH・ナッシュ)の2種類に分類されますが、NAFLは、ほとんど悪化せず良好な経過をたどります(以前の単純性脂肪肝)。一方、NASHは、進行性で肝硬変・肝がんになる可能性があることが明らかになりました。このように今まではアルコールに関係ない脂肪肝は、予後(病気の医学的な経過の見通し)が良好と考えられていましたが、肝硬変・肝がんになるものもあることが分かり、問題になっています。
<NAFLD/ NASHにかかっている人の割合、肝がんの発症は?>
わが国では、2009~2010年の調査でNAFLDの有病率(かかっている人の割合)は、29.7%(実に国民の約3人に一人が罹患)と推定され、大変多くの方がかかっており、増加傾向にある病気であることが判明しました(NASHについての調査はありませんが、NAFLDに平行して、増加しているものと予想されています)。NAFLDから肝がんになる率(肝発がん率)は、低率で1年間で1,000人あたり0.44人(0.44/1,000人・年)とされています。一方、NASHの肝発がん率は、1年間で1,000人あたり5.29人(5.29/1,000人・年)と考えられ、今までの脂肪肝のイメージとはかけ離れて高い値です。
<肝臓の線維化が重要! 線維化の指標としてのFIB-4 index>
NAFLD/NASH発病の最も重要な原因は肥満ですが、NAFLD/NASHの予後は、肝臓の線維化(硬くなること)に最も影響を受けます。そのため線維化の程度を正確に診断することが大切です。
肝臓の線維化を評価する方法として注目されているのが、FIB-4 indexなどのスコアリングシステム(いろいろな検査値などによる点数化)です。FIB-4 indexは、通常の健診項目を用いて算出するため特別の検査を追加する必要がありません。また肝臓の線維化が進んだ人を診断する能力(診断能)が高いと考えられています。
<FIB-4 indexが健診結果項目に追加されます>
NAFLD(ナッフルド)、NAFL(ナッフル)、NASH(ナッシュ)と似たアルファベットが出て、分かりにくいでしょうか?
いずれにしてもアルコールに関係ない脂肪肝の中には、悪化し、肝硬変・肝がんに進むものがあることを理解してください。
来年から滑川健康管理センターでは、FIB-4 indexを健診結果項目に追加し、腹部超音波検査で脂肪肝と判定された方に肝線維化のリスク評価をする予定です。この指標により少しでも肝硬変・肝がんの発症予防に寄与できれば幸いであると思っています。