2019年4月よりオプション検査に「頸動脈超音波検査」が追加されました。
頸動脈超音波検査を受けてみませんか?
厚生連滑川病院
滑川健康管理センター
所長 山本正和
滑川健康管理センターでは今年度から健診のオプション検査として頸動脈超音波検査を追加しました。頸動脈超音波検査はどのような検査なのか解説します。
1)頸動脈超音波検査で早期の動脈硬化を確かめよう
動脈硬化では、当初は血管の内皮細胞機能障害(弾性の低下)が生じ、次いで内中膜の肥厚、プラーク(血管内膜に限局した隆起性病変)が出現します。この変化は、早期の動脈硬化の像として重要ですが、さらに進むと血管が狭窄、閉塞し、心筋梗塞や脳梗塞が発症します。
血管超音波検査では0.1mm単位の血管壁の変化を捉えることができ、このような変化は、病理所見と一致していることが知られています。頸動脈超音波検査は、頸動脈の内中膜肥厚やプラークなど軽微な変化も観察することができ、早期の動脈硬化がないか確かめることができます。
2)実際の検査法
血管病変を詳しく知ることができる頸動脈超音波検査ですが、検査方法はいたって簡単です。胃カメラなどのような前処置は必要なく、横になった状態で首にゼリーをつけて器械(プローブ)でなぞるだけで、安全に短時間(15-20分程度)で検査ができます。また繰り返しできることから定期的な病変の比較・フォローアップも可能です。そして結果は、数値だけではなく画像でも示すことができ、検査を受けた方も理解しやすいのもこの検査の特徴です。
3)どのような人が受けたら良いか
この頸動脈超音波検査は、早期の動脈硬化を検出することができることからその適応は①頸動脈病変を疑う場合、②他部位の動脈硬化性疾患治療時のリスク評価、③生活習慣病症例での動脈硬化進行度の評価などです。一見健康だが、動脈硬化が起きやすい方(糖尿病,脂質異常症,高血圧症などの生活習慣病や喫煙,肥満などがある方)は、健診でこの検査を受けられることをお勧めします。
4)頸動脈超音波検査から動脈硬化病変が認められた例
頸動脈超音波検査で動脈硬化病変が明らかになった実例を示します。症状はありませんが、健診で毎年、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の高値を認めていた64歳、男性の方です。頸動脈超音波検査では、頸動脈の内中膜が厚くなっており(①矢印)、プラーク(②矢印)が見られ、同年代の方に比べ動脈硬化が進んでいることが分かりました。このような病変があるため、動脈硬化が進まないように注意深く経過観察し、治療することにしました。
昨年12月10日「脳卒中・循環器病対策基本法案」が成立しました。動脈硬化による血管病が増える中、国も「がん対策基本法」に加え、脳卒中・循環器病を減らすための基本法案を成立させました。皆さんも今一度、ご自身の血管・動脈硬化について考え、不安に思われる方は、頸動脈超音波検査を受けられませんか?
頸動脈超音波検査を希望される方や何か分からないことがある方は、気軽に健診のスタッフにお申し出ください。オプション料金は税込3,780円で予約制です。(人数制限有)
(参照)
1)頸動脈超音波検査で早期の動脈硬化を確かめよう」に転載した図には、日本超音波医学会 用語・診断基準委員会;「超音波による頸動脈病変の標準的評価法2017」(http://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/jsum0515_guideline.pdf)
Fig.1 動脈硬化の進展
2)実際の検査法」に転載した図には、日本超音波医学会 用語・診断基準委員会;「超音波による頸動脈病変の標準的評価法2017」(http://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/jsum0515_guideline.pdf)
Fig.9b 動脈断層像の表示方法(長軸断面)(一部改変)